ベガスでロシア人を撃つな

僕がプロジェクト・マネジメントについて考えていること

 
部下のミスや不安の多くは、本人の中での判断基準の不在、つまり、「上司が何を考えているか分からない」ということに起因して生じる。
なので、僕は、はじめて自分の部下になった人には、僕がチームマネジメントについて何を考えていて、何を理想像としていて、その中で僕がどう振る舞おうとしているか、あなたに何を期待しているか、を最初に説明することにしている(所要時間はQAを含めても最大30分くらいだ)。
以下は、部下がアサインされた初日に話すことの具体的な内容である。
 
 

チームビルディングの理想像

急成長して高い成果を出すチームを作るために、Googleアリストテレスプロジェクトを自分の中の理想像にしている。
 
  1. まずは心理的安全性を確保する(この説明のまさに目的だ。上司が考えていることを話し、部下の不安を取り除く)
  2. チームのゴール、個人としての役割とゴールを仮決めする(急成長を期待するので、プロジェクト中に役割が変化していくことを理解してもらう)
  3. 決められた期限までに必要な成果を出すのがこのチームのルールであることを確認する(成果を出してほしいだけであり、能力の過不足をテストしているわけではないので、どのタイミングでも遠慮なく相談・提案OK)
  4. 時間があれば、このプロジェクトがクライアントや自社やあなたのキャリアにとってどんな意味を持つのか、ディスカッションを通じて共通認識を作る(時間がなければ、別の日にでも必ず機会を作って話す)
 
 

チームマネジメントのベンチマーク

プロジェクトマネジメント(またはプロジェクトマネジメント哲学と呼ぶべきかもしれない)の名著、「ピープルウェア」をお手本としている。(別途要点をまとめたい)
 
 

働き方の確認事項

・生活習慣:朝型か夜型か。プロジェクト性質上問題なければ出社時間を変更する。夜型なら13時開始など、パフォーマンス最大化するために適宜調整
・作業場所:プロジェクト開始当初は、曖昧かつ複雑性が高いのでオフィスに集合して対面作業。作業能力や意欲を見つつ、本人が希望すれば自宅作業も可とする
・残業は原則禁止:報告前日など重要なタイミングを除き原則禁止にする。過度な残業が発生した場合、2~3日単位で正常化することを約束(例えば終電近くまで残業した翌日は午後イチで解散、など)。
    ※稀に、マジで仕事しまくりたい人もいるが、リクエストがあった場合は一旦禁止としつつ、適宜様子を見て解禁
・その他リクエストがあれば確認。成果を最大化するもの、過度な経費がかからないものであれば大体はOK
 
 

部下に期待することの伝達

・共通事項:決められた期限までに、必要とされる成果を出すこと。そして、そのために必要な条件を自分で設定し、助けが必要であれば自分から申し出ること。
・新人の場合:
・一般的なジュニアメンバーの場合:
・昇格間近のジュニアメンバーの場合:
・(稀に)バックオフィスメンバーの場合:
 
 

僕の性格について

・僕は顔の表情のコントロールが下手なので、怒っているように見える時があるが、気にしないでほしい。
・黙々と集中して作業するのが好きなので、話しかけづらい時が多いと思うが、質問や相談があれば気にせず話しかけて問題ない。また、この特徴をフォローするため、特に用事や懸念がなくても進捗確認の声掛けをこっちからも行う。
・並外れて率直でいることを意図的に重視しているので、気をつけてはいるものの、きつい言い方や厳しい態度を取ってしまうことがあるが、その場合は僕の失敗である。素直に指摘してくれて構わないし、言いにくけれれば飲み込んで忘れるか、僕の上長に告げ口してもらって構わない。(もし不当な指摘だと感じる場合は、上長を交えて議論して解決するつもりだ)

その経営資源はBuyableか?Pricelessか? - あるいは「モノ」の過大評価について

経営資源というと、かつては 「ヒト」「モノ」「カネ」というフレームワークがお決まりだった。最近ではそれに 「情報」 「データ」 などが付け加えられるケースもある。
外部のコンサルタントなどがこのような軸で経営資源を分析するのを見たことがあると思う。何か腹落ちしない感じがしなかっただろうか?
 
産業の本質が労働集約型・資本集約型から知識集約型に移っていくにつれ、「ヒト」 「モノ」 「カネ」 のくくりはあまり意味をなさなくなった。現に、分析している当のコンサルタントですら、自らの事業に 「モノ」 「カネ」 はほとんど必要ないビジネスを営んでいる。
 
「情報」 や 「データ」 と言われても腹落ちしないし(ほんの少しの使えるかもしれないデータと、大量の使えないデータがある)、現場を見ればそれ以前の何か根本的なリソース不足、というかスキル不足だったりメンタル的な部分での劣勢があるように思える。
 
ベイン・アンド・カンパニーは、デジタル時代の経営資源について意味のある分析をするなら「時間」「才能」「意欲」の軸で切るべき、と言っている。
 
組織の希少資源である時間・人材・意欲を効率的に配分している好業績の企業は、
そうでない企業に比べて生産力指数が40%も高いことが明らかになった。
 
とりわけ、最も重要な仕事を最も優秀な「Aクラス人材」で編成したチームに
やらせているかどうかで生産性に決定的な差がつく。
 
日本語版出版を期に行った調査では、日本企業の組織生産力は
グローバル平均の約8割にとどまるという危機的な状況が浮き彫りになった。
 
そして生産力棄損の最大の理由は適切なマネジメントの欠如であることも明らかになっている。
TIME TALENT ENERGY ―組織の生産性を最大化するマネジメント

TIME TALENT ENERGY ―組織の生産性を最大化するマネジメント

 

 

 
 
この考え方を借用すると、現代の、そしてこれからのビジネスを分析する時、金で買えるもの=Buyableな経営資源か、金で買えないもの=Pricelessな経営資源かを軸に考えていったほうが、意味のある課題がすっきりして見えてくる。
 
つまり、それぞれの中身は以下のような切り口だ。
  • Buyable Recources:ヒト、モノ、カネ
  • Priceless Recources:時間、才能、意欲
 
Buyableな 「ヒト」 というのは要員とか頭数といった意味合いだ。一般的な転職市場を通じた人材採用やアウトソース業者との契約により容易に買うことが出来るヘッドカウントを指している。Pricelessな 「才能」 とはいわゆる”Aクラス人材”または飛び地の方向に異質な異才のことであり、社内に希少かつ市場調達が難しいリソースだ。「意欲」 の方はさらに希少で、金で買えないどころか、社内でもどこに湧いているか分かりづらく、捉えたと思ってもふとしたきっかけで消えてしまう、最も希少な経営資源と言える。
 
Buyableな 「カネ」 はいわゆる資本、EquityとDebtのことだ。「カネ」 を買うための金、つまり資本コストは下がり続けている。ゼロ金利の時代では、「カネ」 は昔ほど貴重な経営資源ではなくなってしまった。むしろ、Pricelessな 「時間」 とトレードオフになることが多々あり、安価に調達した 「カネ」 と 「時間」 「人材」 「意欲」 を交換するM&A(= アクハイヤリング)の事例がどんどん増えてきている。
 
これらをうまく運用した先に結果的に出てくるのが 「モノ」 であり、顧客・従業員・株主へ直接還元する価値の媒介となるリソースである。つまり、それは便利なサブスクリプション・サービスを構成するマイクロサービスやクラウドインフラの利用料だったり、快適なハーマンミラーの椅子だったり、株主価値の一部を構成する純資産であったりする。
 
だから、知識集約型ビジネスで 「モノ」 をベースに経営資源を考察することにあまり意味はない。結局の所、「才能」  「意欲」 を運用した結果のアウトプットである戦略を実行するために、あらゆるものがサービス化された市場から調達するだけの話であり、論点はいつ買うか? いつ作るか? いかに早く買い占めるか? という 「時間」 の経営資源の運用にかかわるものでしかない
 
「モノ」 の中にデータとかノウハウとかを含める人がいる。これらも、要するに金で買えるものなのか、金では買えないものなのか(「時間」 「才能」 「意欲」 を運用した先に出てくるものなのか)によって、経営上の意思決定やその実行オペレーションはまったく変わってくる。コンサルタントPowerPointの四角い 「モノ」 ボックスの隣に <顧客データ、オペレーションノウハウ、データ分析基盤> とか書くだけでは何の示唆も出てこないのはそのためである。

その会社はプロジェクトか、それともファミリーか?

本来、会社というものはプロジェクトであるし、本来そうあるべきだ。達成したい目的やミッションやゴールがあり、そのためにチームを集め、資金を調達して希少なリソースを確保し、目論見通りあるいは想定以上の成果を挙げ、見事目的を達成したら出資者にリターンを返すとともにチームも報酬を受け取る。イノベーションを生む企業の多くは、基本的にこのプロジェクトの形で運営されている。
 
一方、かつてイノベーターだった企業が生きながらえて、永続的に安定した集金システムを作り上げると、その内実はまるでファミリーのような共同体となってくる。顧客や出資者やリスク・テイカーに価値を返すのではなく、従業員全員に安心と食事と娯楽を与えるために存在する寄合的な互助集団の様相を呈していく
 
この種の企業によく見られる特徴として、迷走したビジョンが挙げられる。あるいは必要に迫られてビジョンを設定しようとしても魅力的なアイデアが何も出てこないような状態である。なぜ意味のあるビジョンが出てこないかというと、すでに家族だからである。家族には本来達成すべき共同の目的などあるはずもない
 
こうして無理やりひねり出されたビジョンには「いつでも どこでも」「あらゆる顧客に」「幅広いサービスを」「様々な手段で提供する」 のようなブランクワードが窪んだ眼窩に湧き踊り、読むことはできるが意味は分からない感じのステートメントが作り出される(「社会課題をイノベーションで解決する」「テクノロジーで世界を良くする」「インターネットで人々の選択肢を増やす」みたいなトートロジー)。ターゲットが定まっていないので、こうなるとまともな戦略など立てられなくなる。
 
家族とは原理的に、ドライに客観的に言えば、ただ神の気まぐれで同じ場所に生まれ落ちただけの自然発生的な集団であり、そこには明確にすべき存在目的などあるはずがない。ただ共に幸せになっていく終わりのないプロセスがあるのみだ。なので、ファミリー的様相を帯びてしまった企業では、勝てるチームの組成や戦略の最適化といった論点について議論できなくなる。代わりに、今いる人を生き残らせること、快適に職場生活を送れるようにすることが、あらゆる意思決定やその結果として出来あがる仕組みのベースになってくる。年功序列、終身雇用、社内政治、根回し、パワーポイント、認識合わせの会議、誰も傷つけないものの言い方、ローパフォーマーが左遷されるタコ部屋、IT音痴でも使えるようにフルカスタマイズされた基幹システム、こういったものが次第に跋扈し始める。
 
もしある会社がファミリーではなくプロジェクトであれば、チームが存在する理由や目指すべきゴール、そのための明確な期限がおのずと設定される。プロジェクトであれば、年功序列ではなく実力主義、終身雇用ではなく流動的な採用と解雇、社内政治ではなくカスタマーファースト、根回しではなく説明責任、パワーポイントではなくホワイトボードでの議論、認識合わせの会議ではなく意思決定の会議、誰も傷つけないものの言い方ではなくスタンスを張った大胆な仮説の提示、ローパフォーマーが左遷されるタコ部屋ではなくネクストキャリアの後押しと支援、IT音痴でも使えるようにフルカスタマイズされた基幹システムではなく使い方を学習することで汎用性が広がるSaaSこういったものが一切の根回しも認識合わせの会議もなしに自然に採用されるようになる。

プライドが高く、能力が低い人についての雑感

・プライドが高く、能力が低いタイプの人がいる。
・正確には、能力がまったく無いわけではない。特に一定の学歴があれば、ホワイトカラーのオペレーション業務くらいなら適切なレクチャーとマネジメントを与えれば誰だってこなせるくらいの能力は持っている。ただ、本人の自己イメージが高く、乖離が大きい
・作業を任せるとプライドが傷つけられて責任感を無くし、凡ミスが増えて雑なアウトプットになる。成果を任せると能力が低いので完遂できない。
・経験上、この手の精神的成熟に問題がある人は成長に長い時間がかかるか、(観察可能な常識的な時間軸では)まったく成長しない。
・とくに成果主義の職場では、本人は飄々としていることが多いため周囲の期待値とのギャップで不当に低く評価されるか、本人が自己イメージと現実の成果とのギャップに混乱して精神的に参ってしまうかで、早期に退職するケースが多い。

アトラシアンの戦略が好み

 

■顧客を金で買うのではなく、低価格で大量の顧客に使ってもらう

CACを極限まで下げ、Churnを抑えることでLTVで儲けるというやり方。
営業チームを持たず、客先に訪問してのデモや、トライアル登録後のしつこい電話フォローアップとかもやらない。
 
私たちはある信念に基づき、通常のソフトウェア会社とは一線を画した販売アプローチで世界中に製品とサービスを展開しています。
その信念とは、素晴らしい製品はそれ自身が価値を証明する、ということです。
具体的には
1. 販売のためのコストをかけなくても売れるぐらいの優れた製品を開発する
2. それを低い価格で提供する
3. 低い価格で提供するために世界中の多くのユーザーに使ってもらう
4. 世界中の多くのユーザーに使ってもらうためにオンラインで販売を行う
5. オンラインで販売を行うために製品の評価を気軽に行ってもらい、技術情報や価格を公開する
https://confluence.atlassian.com/jpns/faq/%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%A3%BD%E5%93%81%E3%81%AE%E8%B2%A9%E5%A3%B2%E6%96%B9%E6%B3%95
 
 
同時に、営業マンに問い合わせなくても製品に関するあらゆる情報が把握できるよう、Webを通じた情報公開を徹底してきた。「特に会社が小さいうちは、できるだけブランドをアピールし、導入事例を公開するなど情報をオープンすることが大事だ」
 
 
 

■起業不毛の地オーストラリアで時価総額5兆円のテック企業を作った

サンキュー、スコット&マイク。俺も頑張るよ。

クレジットカードの与信枠を活用し、US$1万ドル(約110万円)の創業資金で活動開始
オーストラリアはベンチャーキャピタルが少なく、スケールのための資金調達が難しい
https://kigyotv.jp/news/atlassian/
 
 
 

■起業のきっかけがめっちゃ凡人

インターネットで世界を変えるとか言わない。いいね。
「就職活動はしなかった。なるべくネクタイを締めずに、大卒初任給ぐらい稼ぐにはどうしたらいいか考えた結果が起業だった」。