ベガスでロシア人を撃つな

【映画】トレーニング・デイ

トレーニング デイ [Blu-ray]

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最後、デンゼル・ワシントン演じるアロンゾは”最後にはオレが勝つ”と宣言したとおりに窮地を切り抜けた。彼がラストシーンで蜂の巣にされたのは、権力の濫用に対して正義の鉄槌が下されたというわけではない。殺された理由はあくまで「ベガスでロシア人を撃った」からだ。

この名作汚職映画の本質を「悪いことはやめましょう」というその他の映画でも受け取れるようなメッセージに単純化して見誤るのはもったいない。アロンゾのやり方は過去から映画全編に渡って成果を上げているし、彼の深い部分に正義という動機が多少なりとも残っていることは間違いないと思う。狼を倒せるのは狼だけだ、という彼の持論も正論だろう。建前だけでなく、適応するしかなかったという意味でも、狼に成り切るしかなかったのだ。

イーサン・ホーク演じるジェイクはギャングに殺されかけ、幸運にも拾った命を再度捨てる覚悟でアロンゾを追い詰めるも、結局は息の根を止めることはできなかった。彼は狼になることは出来ない人間だった。自分は正義を実行するに足る力を備えていない人間である、そのことを彼は"トレーニング・デイ"の一日で学んだのだ。