ベガスでロシア人を撃つな

ネトウヨ話法のおかしみについて

 例の帯広市における非実在ナマポ問題を見た。内容としてはべつに見るべきところはない。でも質問者や回答者たちの書き込みが、僕が前から面白みを感じてた文言の見本市のようですごく気になって、たとえばその内の一つがこれ。

帯広のもたぶん裏で何か手を回しているんでしょうね。

 誰が、何を、どうやって??「何か」ってなんだ?

 ネトウヨの書き込みでよく見かけるこの手の実りのない勘繰り。もうこのページ全文引用したいくらいだ。彼らはあくどい「何か」について嗅覚が働くらしいが、その「何か」についての具体的なイマジネーションや分析、とかそれらの言語化には到達できないらしい。これは中国人の話だけど、これを「在日」「電通」「公明党」などに入れ替えた各パターンもウェブ中に充満してる。

 これ、ネトウヨ話法って呼んでいいんじゃないだろうか。この手の語り口って5W1Hがすっぽり抜け落ちていて、ガワはあるのに中身のない、ハンバーグ抜きのハンバーガーみたいで妙に笑いを誘う滑稽さを感じる。そして発想がバカげてる割には、大抵、言葉遣いは大人っぽいというかビジネスっぽいというか。非礼を避けるような書き方で、その実なんら新しい情報を与えない主張。

 おそらく、リアルとしての彼らは、ゴー宣マンガ嫌韓流に影響を受けて頭に血が上った多感な中高生なんかじゃ別になくて、日常の必要な諸々をきちんとこなしている一人前の勤勉な大人たちだろう。つまずきながらも仕事をこなし、社会とちゃんと繋がりを保っている一定の水準の人々なんだろう。社会生活で要求される正しい言葉遣いを体に染み込ませているし、必要なコミュニケーション作法も心得ている人たち。だからこそ突飛すぎる発想の滑稽さが際立っている(普段リアルではこんな独特な主張を周りに発表したりしてないだろうし)。

 彼らは緻密な思考はできないけど本能的な嗅覚と言葉の組み合わせ方だけは知っていて、ぼんやりと感知したアイディアを普段自分が目にするような文章に似ている文章(よって自分で読んでも違和感を持たない文章)に寄せる「書き方」だけは知っている。だけど模倣やルーティーン以上のことは出来ず、他人の文章から行間やメッセージを汲み取る習慣もないから、こういう空疎なレトリックでは何ら意味を生じさせることが出来ないことに気付けない。彼らはたぶんこういう人たちだ。

 とにかく、何も意味を付属させてないのに言葉の組み合わせ方だけが整然としてるのがおかしみを誘ってると僕は思うのだ。ぱっと見では落ち着いた体勢の書き手に見えるけど、実際書かれていることに内容がないから、「在日」「中国人」「公明党」「ホワイトハウス」「電通」「マスゴミ」「あの業界」etcと、お好みの悪役に自由に頭を付け替えることができる(だから何の意味も成さない出来の悪いパズルでいい大人が遊んでるみたいで、ひどく間抜けだ)。

 まあ、書き方や語り口のバイブスだけでコミュニケーションの体裁を繕うのってそれ相応に高度な空気読みスキルが要求されるだろうし、だからこそ日常の雑事では彼らもそれなりにやってるんじゃないかと僕は想像するわけだ。明らかに能力の役立て方が間違っていて、でもその流通経路がある以上こうなるのは仕方ないというか。ネット言説は本質的にネトウヨ話法的な重力には逆らえないんだろう。