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内田樹『街場のアメリカ論』感想

 

街場のアメリカ論 (文春文庫)

街場のアメリカ論 (文春文庫)

 

 

この本、全編にわたって面白く勉強になったんだけど、自分がアメリカ人やアメリカという国に対して感じていた違和感っていうか、もっというと「気に入らない部分」がクリアになったように思う。

「上が変でも大丈夫 ーーアメリカの統治システム」という章で説明されているのは、アメリカは国家として完成形としてスタートしたがために、その政治機構は愚者の統治によるリスクをヘッジすることに焦点を当てて構築されているという話。

なるほど、この「完成形としてスタートした」というアメリカの自意識が僕は気にくわないのだ。われわれに成熟は必要ない、というスタンスが。

実際このシステムは仕組としていわゆる「次善の策」にもっとも近いだろうし、よって民主主義なるアイディアの根幹を成す考え方なんだろう。

その点で言えば、非実在の万能の統治者を求め続ける僕たち日本人には民主主義というシステムは根本的に肌に合わないんじゃないか、とも思う。ここ数年バカの一つ覚えみたいに唱えられ続けている「リーダーシップ」なる言葉は、日本では「救世主」の意味で使われている。無理難題に直面して戸惑う囚人たちを導くモーセのようなイメージ。「あなたはリーダーシップがありますか?」と面接で問われれば、それは「あなたは私たち子羊の代わりにハードな決断をやってのける善良な独裁者ですか?」の言い換えだ(だから他人に「リーダーシップ」を要求する人間は、現代の日本ではとても下劣に見える)。

こういう発想の根源には、おそらく著者が他の著作で言っている「日本人の辺境性」、つまりどこか外部に評価基準を求めなければ自活できないという国民性があるのだろう。

日本生まれの日本人としての僕には、率直に言ってこういう考え方のほうが手に馴染むし、アメリカ人みたいに他人を引き算で評価するやり方は一生しっくりこないだろうと思う。

これ、アメリカ人と交渉する時や、アメリカ政府と交渉する局面で誰に投票するかを考える上で絶対知ってないといけないことなんじゃないか。とりあえず『アメリカのデモクラシー』も読まなきゃ。