ベガスでロシア人を撃つな

【映画】ドラゴン・タトゥーの女

ドラゴン・タトゥーの女 [DVD]

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一回目に観た時は、長くて退屈なつまらない話、音楽と映像はおしゃれだけどという程度の感想しか抱けなかった。話の筋に興味が持てないし、そもそもスウェーデン人の人名を何人も覚えることなんてできるわけない。でも、二回目の鑑賞でどんなメッセージが送られようとしているのかぼんやりと見えてきた。

 

後半に地下の拷問室で犯人が主人公に言った「どうして人は自らの直感を信じることができないのか」。これがこの映画の核心だと思う。メインの筋や謎解きは恐らくどうでもよくて、瞬間的な判断の失敗について描いた人間ドラマなのだ。

犯人(名前を覚えられなかった)の言うように、ダニエル・クレイグ演じる主人公は彼の家に入ることを拒否すべきだったし、実際に彼は無理強いなど一切しなかった。相手の機嫌を損ねることへの習慣的恐怖心が主人公を窮地に追い込んだ。何かしらの理由をつけて直感通りに逃げていれば、直感を信じて拷問現場に現れたリスベットの手を借りるまでもなく、楽に助かっていたはずだ。

思えば、リスベットをレイプし復讐を受けた精神科医も同じ要因で失敗を犯した。リスベットが尋常ではない雰囲気で登場した時、彼女を気遣うような、機嫌を伺うような素振りを見せたことからこの精神科医もそのことに気付いていたはずなのだが。

こんなふうに、自分の本能的直感を信用できずにミスを犯す人々が描かれる一方で、ヒロインのリスベットのみが直感に従い、対人的恐怖を抱くことなく行動する。 

直感で動くリスベットは精神障害と認定されているが、他人への過剰な気遣いを重んじて結果的に失態を晒す主人公や精神科医こそが、現代における深刻な病に冒された患者なのではないのか?この映画から感じ取るべきメッセージはそこにあると僕は思う。