1月の活動報告

できれば毎日日記を書きたいところだが、仕事の忙しさ、体力・気力などの点から継続が難しいので、2018年は月毎に日記を書くことにした。(活動報告という形)(誰に?)
 
年末年始はほとんど家にいたが、元旦は都内にある妻の実家で過ごした。年末年始といえば一年を通じてテレビが一番面白くなる時期だが、見たのはガキ、クイズ正解は一年後、あとはあんまり覚えていない。
 
その後、バケーションでハワイへ。ヒルトンのコンドミニアムに泊まり、結婚式をした。妻も僕も形式としての結婚式にあまり興味を持っていなかったが、やってみるとこれはこれで悪くはないという印象だった。
 
サイコパスみたいな文章になってるな。
 
1月のオアフ島は地味に寒くて、あまりビーチやプールには行かなかった。日差しが当たると暖かいけど、日陰や風が吹くと一気に寒くなる感じ。冬にリゾートに行くならもっと赤道に近い地域の方がいいのかもしれない。妻とも毎年どこかしらに海外に行こうと話をした。
 
その後、ロサンゼルスに移動して、妻も僕も大好きなテーマパークめぐりをした。USHollywoodとSix flags。USHollywoodは大阪のUSJに比べるとこじんまりとしていて、面白かったけど、はっきり行ってクオリティは低かった。ハリウッドには森岡さんのような優秀な経営者がいないのだろうと思った。グルーがいきなり一人で歩いていたりして、顧客体験をなんだと思ってるんだという感じ。Six flagsは絶叫アトラクションばかりが並ぶアメリカの富士急みたいなテーマパーク。楽しかったうえに、超ガラガラでどのアトラクションも5分と待たずに乗れるレベルだったけど、逆に連続で絶叫系に乗りすぎて自律神経がイカれた。
 
ロサンゼルスで感動したのは、Uberの使い勝手の良さだ。簡単に車を呼べて、アプリ上のマップで自由に乗車場所・降車場所を指定できて、車を呼んだら数秒以内に配車確定して、料金も渋滞状況に依らず配車時の固定で安い。まさにタクシーの再発明だと感じた。だいたい、時間がかかるとお金がかかるというレガシーなタクシーの仕組みは意味不明じゃない?なんで不便に金を払うシステムになってるんだ。時間短縮のために金を払うのなら理解できるけど。
 
あと、Airbnbで借りたマンションはハリウッドのあたりで、周囲に安いスーパーが無いのは不便だった。基本的にオーガニックスーパーしかなく、割高。ハワイのコストコやドンキで見たような、食べ切れないほどのありえない分量を格安で販売しているスーパーは皆無だった。
 
中旬に帰国してからは、また仕事が始まってしまった。最悪だ。
12月まで新規事業企画をサポートしていたクライアント企業で、経営戦略策定のプロジェクトが始まった。クライアント企業は正直に言って、景気と業界構造に守られて生き延びてきたために経営方針と呼べるものが皆無なのだが、このプロジェクトで3ヶ月で大枠の方針を作りきり、その後、中計を作ることになると思われる。
 
コンサルに転職して1年半、最近思うのは、あるべき戦略の策定自体はあまり苦もなくやれるようになってきた。一定の定石があるので、単に論理的に正しい答えを出すこと自体は、そんなに難しくはない。一方で、あるべき戦略に対し!特に古くて大きい大企業の場合は「そんなことはやれない(やる自信がないという意味だ)」「うちの社員は頑固だから納得しない」「競合が多い」などの理由で難色を示されることがある。はっきり言って、これらの反応はほとんど感情的なところから出てくるものだから、コンサルの仕事も必然的に、クライアントの思いや人間関係を引き出して整理し、落とし所に導く作業が大半になる。ベンチャーであれば社長の「さっさとやれよ」「成果出せよ」の言葉だけで実行に移されるのだが、レガシーな企業では実行までの制約が大きく、実行まで視野に入れた場合の戦略策定パラメータが膨大な数になってしまう。戦略策定がハードスキルだとした場合、これらのソフトスキルは、知識や能力、メンタルモデルのギャップを埋めるものだ。コンサルに客は選べない。正直、もっと優秀で自信を持った人達と働きたいという思いが強まっている。
最近プロジェクトに入った転職組の先輩もパフォーマンスがいまいちで、あまり学ぶところはない。戦略系というよりも、上述のようなレガシー大企業に常駐して社内政治サポートをメインにやっていたような人だ。前々から考えているとおり、このプロジェクトが終わったら転職するつもりで準備していこうと思っているところ。
今の会社でやるべきことはもうあまり残っていない。コンサルスキルについてはまだ向上の余地はもちろんあるが、プレイヤーとしての伸びしろは少なくなってきたように思う。新しい領域の知見はうちの会社の人たちはほぼ持っていない(他社の人に聞くとコンサルは基本そうらしい)ので、自分で勉強するしかない。人格的にも、生き方についても、真似したいと思えるような人はいない。優秀なやつは世の中腐るほどいるので、僕はスピードで差別化したい。残り半年でやるべきことはそこくらいかな。
 
今月は以上
 
 

早く退社したい時にオススメの行動ベスト5

新卒1年目の新入社員も、6ヶ月連続でノルマ120%越えの営業のエースも、脂が乗ったマネージャーも、ファウンダーCEOでさえも、会社で働く者なら誰もが定時を過ぎたら一刻も早く家に帰りたいと思っている。

職場から早く帰りにくい理由は様々ある。転職したばかりでまだ周囲の信頼が得られていない、やる気は無いがやる気が無いと思われたくはない、Excelのショートカットキーが覚えられないからデータ入力のタスクが永久に終わらない、同僚や上司がみな友達も彼女も子供もいないので仕事だけに打ち込むことが暗黙の決まりになっている、などなど。

しかし、そんな障害があっても、以下に示す小さな工夫を実践することで上手に定時上がりを達成することが可能だ。早く自宅に帰って心置きなくネットフリックスを見たりどうぶつの森ポケットキャンプの続きをやることで、ぜひ、本来あるべき充実した人生を取り戻してほしい。

 

■ 5位:「続きは家でやります」と言う
定時を過ぎ、オフィスにややダラけた雰囲気が流れ出したらチャンス。同僚となごやかに談笑しながら、おもむろにラップトップの電源コードをコンセントから引き抜いてACアダプタ本体にくるくる巻き付けつつ、そのままパソコン自体もゆっくりとリュックに仕舞おう(あくまで談笑を楽しむフリをしつつ、ゆっくりと動作を行うのがコツ)。そして、「続きは家で作業します」と言い、間髪入れずに「お先に失礼しまーす」と言い残して素早くオフィスを後にしよう。

同僚たちはあなたの仕事への熱心さに感心し、場所と時間をいとわずに働く成果志向のコンピテンシーにおったまげ、同時にこんな稀代のハードワーカーの猛烈な集中力に水を差すようなダラけた雰囲気を生じさせてしまったことに罪悪感を抱いて、快くあなたを送り出してくれるだろう。

 

■ 4位:ネットワーキングイベントへの参加予定を入れる
もしあなたが「connpass」や「Peatix」、または「everevo」のようなイベント検索アプリに登録していなければ、今すぐ登録して、できるだけくだらないと思われるセミナーを探して参加申し込みをしよう。

早く帰りたい日は、社内のOutlookスケジュールに「BtoBマーケティング担当者のためのデータ・オリエンテッドなコミュニケーション・プロセス設計講座」みたいな件名で予定を作成しておくべきだ。

チームメンバーたちは、先端テクノロジーへのキャッチアップの機会をまめに作るあなたの姿勢に理解を示し(実際は中途半端な業者の中途半端な製品セミナーだとしても)、社外のキーパーソンと積極的に人脈を構築しようとするあなたの外交的な性格に尊敬の念を抱き(実際はネットワーキングタイムで誰にも話しかけることが出来ないのだとしても)(さらにはその参加者達が怪しいマルチビジネスや生命保険の営業マンやどう見ても市場ニーズがあるわけがない意味不明なマッチング・プラットフォームを運営する自称ベンチャーのCOOだらけなのだとしても)、快くあなたを送り出してくれるだろう。

 

■ 3位:普段は着ないような、いい服を着て出社する
何事も準備が大事なので、早く帰りたいならそのための伏線を張ろう。普段は着ないようないい服を着て、もちろんお化粧やヘアメイクもバッチリで出社しておけば、その日の夜にあなたに何か重要な予定があることを朝から十分にアピールしておくことができる。

普段はユニクロのジーパンにライトオンで売ってるような緑色のアメリカの大学名のロゴが入ったパーカーを着ているエンジニアも、紺のスラックス(ユニクロで売ってる化学的に温かい素材でOK)にグレーのジャケット(ライトオンで売ってるペラペラの生地でOK)に茶色のビジネスシューズ風の靴(Amazonで買える合皮でOK)を合わせて出社すれば、周囲の同僚はみな、あなたが今夜ついに一歩踏み出すために結婚相談所に行く予定を入れたと思い込み、快くあなたを送り出してくれるだろう。

ただし、転職活動の面接に行くと勘ぐられないように、スーツで出社するのはやめよう(本当は転職活動の面接に行くために定時上がりしたいのだとしても)。

 

■ 2位:周囲より早く出社する。そのことを周囲にアピールする
規定の始業時間が9時であれば、7時半にはデスクにつくようにしよう。

その際、早く出社したことを同僚に十分に周知するために、始業時間前にメールに返信したり、わざわざSlackに投稿したり(スタンプだけだと実施時刻をアピール出来ないため注意)、部署内のGoogleドライブに昨日の会議の議事録をアップしたりするべきだ。

加えて、昼食の時間や、あなたの貴重な寿命を奪う会議の冒頭の下らない雑談タイム(業界ではミーティングジェノサイドと呼ばれる)などのムダな時間に、あなたが毎朝何時に起きているか(なるべく多めに尊敬の念を収集できるよう、Oha4(日テレ)の放送時間内が望ましい)、あるいはそんなに朝早く起きてどんな有意義な活動をしているのか(勉強やヨガなどの自分志向の活動よりも、子供の弁当を作る、地区消防団の清掃活動を手伝っている、などの道徳的に批判しにくい活動が望ましい)を積極的にアピールしよう。

たとえあなたが月曜日から水曜日まで連続で定時後1時間以内に退社したとしても、周囲は快くあなたを送り出してくれるだろう(2018年現在のマネージャー世代が持つ無意識のバイアスを考慮すると、残念ながら、早く退社するのは週3日以内に抑えるのが望ましい)

 

■ 1位:(作成中です。続きは自宅で作業します。お疲れ様でーす)

 

(※実践は自己責任でお願いします。私自身は上記に挙げるような行動は一切取っておらず、昨年の勤務時間は月平均で250時間にのぼるほど勤勉に労働しております)

2017年に読んだ本ベスト5

今年読んだ96冊の中から個人的ベスト5+次点。
初版が今年でない本も含まれます。Amazonアソシエイトのリンク貼ってます。


■ 5位:ヒルビリー・エレジー』 J.D.ヴァンス (著), 関根 光宏 (翻訳), 山田 文 (翻訳)
ラストベルトの白人貧困層だった著者が地元の人々・環境を振り返るノンフィクション。
ヒルビリーとは、合衆国東北部の田舎者(特にかつて工場労働で生計を立て、製造業の盛衰に生活を左右されてきたスコッツ=アイリッシュ系の人たち)を指す。ヒルビリーの持つ、貧困の連鎖構造を生む特性(現実を見ない、すぐにキレる、何事も継続できない、生活習慣がだらしない、結果すぐに仕事を辞めてしまう)と、彼らにくすぶる苛立ち、浪費することしかできない生活への不安が書かれ、暗い気持ちになる。 

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち

 

 


■ 4位:『LIFE SHIFT』 リンダ グラットン (著), アンドリュー スコット (著), 池村 千秋 (翻訳)
統計上、我々の世代の50%は100歳まで生きるので、人生は必然的にマルチステージを推移する。
全力で長生きするとお金も活力も足りなくなるので、時々力を抜くためのストック型資産の形成が必要だが、それには財産だけでなく能力、健康、人脈も含まれる。マクロ環境に恵まれた高度成長期育ちの能天気ジジイ共とは根本的に生存戦略が異なるので、連中の言うことなんて聞いてはいけない。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

 

 


■ 3位:『あなたの人生の物語』 テッド・チャン (著), 公手成幸 (翻訳), 浅倉久志 (翻訳), 古沢嘉通 (翻訳), 嶋田洋一 (翻訳)
「メッセージ」の題名で映画化された小説。
外国語を学ぶとその言語の思考法やものの見方がインストールされる経験を外国語学習者はするが、この小説の主人公は、時制を持たない言語を話す宇宙人の言葉を学ぶことで未来を幻視する(頭に浮かぶことが過去/現在/未来の区別がつかない)思考法を得る。
同録の「地獄とは神の不在なり」は、天使の物理的な降臨により災害が発生する世界をテーマにした短編だが、こっちの方はさらに面白い。
天使の出現が自然災害として書かれ、その降臨による地震・火災・地割れで家族を亡くした人々、障害を患った人々が右往左往する。自然の出来事を救いとか罰とかに結び付けるのは人間の側の勝手な考えであって、出来事の主体(我々にとっては自然、一神教徒にとっては神?)としてはどうでもいいことであり、我々の方ではきちんと現実を生きよう、ということだと理解した。僕にとっては宗教、天使降臨、祈りと天罰、アルコールやマリファナによる酩酊、ヒルビリー、高度成長経済、キャリアプラン長時間労働はすべて同じものに思える。

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

 

 


■ 2位:『なぜUSJのジェットコースターは後ろ向きに走ったのか?』 森岡 毅 (著)
元P&Gマーケターの著者による、倒産寸前だったUSJのV字回復の物語。
世界標準の科学的なビジネスのやり方で、根拠のない自己否定の空気が蔓延する会社を変革し、ずば抜けた成果を上げていく。売上高1,000億円に対し500億円を投資してハリポタを建設するために社内を説得して回る覚悟とリスクの計量的な算出、ハリポタのカットオーバーまで予算がない中で食いつなぐため売り上げを作るアイデアを脳が千切れるまで考え抜くシーンは素直に清々しく感動的で、とても映画栄えしそうだと思った。

 


■ 1位:『反脆弱性 ナシーム・ニコラス・タレブ (著), 望月 衛 (監修), 千葉 敏生 (翻訳)
トレーダーとして長年市場を観察し、バブルも金融危機も経験する中で、なぜ金融業界では、高級スーツを着て肩で風を切って歩くような「強い」連中が簡単に吹き飛んでしまうのか? というのが「まぐれ」「ブラックスワン」などの著者の過去作からの主要なテーマだけど、本作では「fragileの反対語が存在しない」ことの発見をきっかけに、脆さと強さと"反脆さ"の違いを考える。
要点は、全体の強さは脆さとイコールであり、全体の反脆さは部分の脆さとイコールだということ。
全体として強い金融業界はふとしたきっかけで簡単に吹き飛ぶ一方、脆いプレイヤーだらけでも「レストラン業界危機」なんて起きない(つまり飲食業界は「反脆い」)。
反脆い生き方とは、例えば会計士と90%結婚してロックスターと10%結婚するようなもの。
一方で、反脆さの性質(ダウンサイドに比べてアップサイドが多い)を悪用する連中には注意が必要。例えば自分の作った薬を飲もうとしない医者、若者に起業を勧める成功者、先進国から来た観光客 etc.

 


■その他次点:
『いたいコンサル すごいコンサル』 長谷部 智也 (著)
金づちの性能は使い手の能力に依存する

いたいコンサル すごいコンサル 究極の参謀を見抜く「10の質問」

 

『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』 山口 周 (著)
ロジカルスキルはもはや金づち並みのコモディティである

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)

 

『会議でスマートに見せる100の方法』 サラ クーパー (著), ビジネスあるある研究会 (翻訳)
ホワイトボードの姑息な使い方集。あるいは、人はなぜ会議に出るのか?

会議でスマートに見せる100の方法

 

『ベストセラー・コード』 ジョディ・アーチャー (著), マシュー・ジョッカーズ (著), 西内啓 (監修), 川添節子 (翻訳)
ベストセラーを予測するAIエンジンによると、女性が才能の出し場を見つける「ガール小説」が今は売れやすいとのこと(ゴーン・ガールガール・オン・ザ・トレインドラゴン・タトゥーの女

ベストセラーコード

 

ザ・サークル デイヴ エガーズ (著), 吉田 恭子 (翻訳)
「ベストセラー・コード」で売れる確率1位と判定された。最先端のテック企業に入社した主人公が承認欲求をエンジンに危険に出世していくガール小説。エマ・ワトソン主演で映画化もされた。

ザ・サークル (上) (ハヤカワ文庫 NV エ 6-1)

ザ・サークル 下 (ハヤカワ文庫 NV エ 6-2)

ヒップホップはラッダイトをやってもいいのか? ― 社会変革の可能性、あるいはその限界 ―

  Google Driveを整理していたら、学生時代に授業で書いたレポートを色々見つけてしまった。いま読んでも考えや認識が変わっていない、かつ、ウェブに流すのが恥ずかしすぎるわけでもない、くらいのものがあったのでブログに掲載しようと思う。(誤字脱字含め未修正。参考文献の記載がないため事実との整合性は未確認。2011年の後期期末レポートとして作成)

  もしかしたらどなたかのブログor書籍などから剽窃(サンプリング...とは言いません)している可能性があるので(何をinputに書いたのか記憶が曖昧なため。。。)、もしその点について疑義がある方がいらっしゃいましたら、コメント欄等でご一報頂けると幸いです。(ASAPで修正or削除します)

 

*タイトルは、トマス・ピンチョンのエッセイ ”Is It OK to be a luddite?"(ラッダイトをやってもいいのか?)から取ったと推察。

 

 

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 ポピュラー音楽、いわゆるポップスは古今東西で、若者の人格形成や行動に多大な影響を与えてきた。若者は自分の気分や問題意識をうまく表現するアーティストを探し、友達と共有することを楽しむ。時代を象徴するいくつものアーティストが登場しては衰退していき、若者たちは彼らの作品を発見し、親しみを持ち、同年代とのコミュニケーション・ツールとして消費しては、もっと共感を持てるような別の作品を発見するといった行動を繰り返してきたのである。そしてその最新の動向としてあげられるものがヒップホップの普及である。アメリカにおいて黒人のストリートで発祥したヒップホップが、世界中のヒットチャートを賑わせている。70年代に登場したヒップホップは急速にその表現方法を発達させてきた。90年代には、いくつかのヒップホップ・アーティストは発祥国のアメリカで国民的人気を獲得し、00年代に入るとアメリカ国内のヒットチャート上位の大半を占めるようになり、さらにその人気は世界中に飛び火していった。したがって、現代のポップスを語る際には、ヒップホップの台頭は欠かせない話題となるだろう。ヒップホップの登場とその流行は、アメリカにおいて、若者の行動にどのように影響を与えてきたのであろうか。またヒップホップが今後、アメリカに留まらず全世界で社会変革を促すような、歴史的に更に重要な意味を持つムーブメントとなる可能性はあるのであろうか。本レポートでは、この点に軸足を置いてヒップホップが若者と社会の関係性に与える影響を考察する。

 ヒップホップは、70年代初期の黒人貧困層の居住区(ゲットー)に起源を持つと考えられている。この時代のアメリカでは国民の間で所得格差が拡がりはじめ、都市の中に住む貧しい黒人と郊外に住む裕福な白人という構図が顕在化しつつあった。このような不安定な時期に起こったのがヒップホップであり、ストリートや公園で芽吹いたこの新たなカルチャーが若者に自己と社会に対する問題意識を自覚させ、現在では海を越え、人種を越え、世界中のスタジアムでイベントが行われるような巨大カルチャーへと進化を遂げてきたのである。
 もともとはゲットーの一部でのはやりものであったヒップホップは、「ラッパーズ・ディライト」のヒットによって最初の一歩を踏み出し、全米の黒人の若者を巻き込む流行となったのである。当初はいわゆるパーティ・ソング的な楽曲が多かったものの、80年代後半からは、政治的な主張をハイライトしたヒップホップ・アーティストも登場した。その後は前述の通り、世界的な流行を経てポップスの一大ムーブメントとなったヒップホップであるが、この流れの中で、ヒップホップは文化的な重要性と同様に、商業的にも重要な意味を持つようになった。つまり、黒人貧困層のアングラ・カルチャーとして出発したヒップホップは、白人を始めとする他人種を主要な顧客とする、カネになる巨大ビジネスへと変貌したのである。
 このことはヒップホップのスタイルに論争を巻き起こす変化を起こした。ラッパーたちはレコードを売るために過剰なキャラクターを演じはじめたのである。麻薬や銃の使用、行き過ぎた女性蔑視を歌詞に盛り込んだギャングスタ・ラップと呼ばれるスタイルがヒットするようになったのであるが、これはまさに、黒人に代わり白人が主要なリスナー層となったためであると解釈できる。このような「ゲットーの日常」を描いたマッチョイズムは、中流以上の白人の若者にとって、憧れの「非日常」であるからである。そのような白人のニーズに応えるラッパーは当然、黒人からは「カネのために白人に魂を売った」として非難された。さらには音楽のスタイルどころか、楽曲がヒットし、アーティストが裕福になること自体が、主要なリスナー層である白人に受け入れられたという意味で「ワック」(=ダサい、といった意味のスラング)であると評されるようになったのである。

 この流れは、黒人の若者と白人の若者のあいだの自己意識及び関係性において、重要な断絶が存在することを示唆していると私は考える。つまり、白人の若者のゲットーへの憧れから見られるように、彼らは黒人のサバイバルでスリリングな日常とそれらをくぐり抜けてきたタフネスに尊敬の念を感じているにもかかわらず、黒人の若者はそのリスペクトを素直に受け入れようとしないのである。
 経済的に大きな成功を収めたヒップホップが、そのパワーを利用して政治的課題解決の手段として期待されるのは当然のことである。アメリカには未だに白人・有色人種間での感情的断絶、経済的格差が存在し、解決の兆しは見えていない。ヒップホップという現代のアメリカの若者にとっての共通言語が、互いの人種間での歩み寄りを促進し、様々な人種のあいだで平等に福祉を享受できるような政策策定のための議論と行動を促すプラットフォームとなることを期待する人々は大勢いる。人種の壁を越えて若者に受け入れられたヒップホップは、そのような社会変革を起こすポテンシャルを十分に持っているように見えるが、先に述べたようにその内部には未だに埋めがたい断絶が存在するのである。
 アメリカに限らず、ヨーロッパでも、グローバリゼーションに基づく移民の受け入れが進み、国家内での多人種化が進んでいる。わが国をはじめとした東アジアの経済的先進国諸国でも、そのような流れが加速する蓋然性は高い。そのような将来に起こりうる問題としてあげられるのは、移民であるマイノリティたちとの感情的・経済的断絶である。ポピュラー音楽などの普遍的文化は、少なくとも人種間の感情的断絶を緩和し、それが経済的断絶をも解決に向かわせる糸口となるポテンシャルを十分に備えていると私は考える。しかしながら本レポートで見てきたように、現在アメリカで生じている先進事例はその仮説の反証となるようなものであった。
 文化が人々の利益のための政治的行動に使用されるのが良いことであるという点に疑いはない。ヒップホップという巨大な文化の力を良い流れに向かわせるためには、ヒップホップ・アーティストたちの今後の活動、特にヒップホップ世代に良い影響を与えるような活動がいかにしてなされるかにかかっているのである。


(2557字)

<読書録>『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』

 かつて、音楽が無料で手に入る時代があった。1990年代の終わりから2000年台半ばまでの間、CDはまるで売れず、というかCDに収められていた楽曲(1枚あたりだいたい12曲)は音楽の海賊たちによってウェブの海上に放流されていた。音楽ファンは無料で、自宅から、アーティストたちの作った作品を自分のものにし放題の時代だった。

その海賊版の時代以前、音楽はだいたい10曲当たり3,000円も払って購入しなければならなかった。音楽が欲しい人は、財布から物理的な紙幣を取り出し、雑菌まみれのお札に触れて手を汚しながら、わざわざ繁華街のCDショップに出向いて物理的なディスクを購入していた(しかも、ショップに行くための電車賃まで支払っていた)。
 
そして本書が出版された2016年。実は今も、音楽は無料で手に入る。だが、海賊版mp3の太平洋だったPirateBayやMegaUploadが干上がってその姿を消し、誰もがクラウドストレージの利便性に味をしめた今、海賊版の音楽を欲しがる人はもはやマイノリティになった。代わりに人びとが音楽を手にい入れる場所はSpotify、AppleMusic、AmazonPrime Musicを始めとした、サブスクリプション型のストリーミングサービスになった。その対価さえも、無料時代以前と同じ水準に戻ってはいない。今や月額1,000円以内で、数百万曲の楽曲を手に入れることができる(もちろん電車賃なしに)。とはいえ、音楽を含めたあらゆるものがネット上で無料で供給されるようになった今の時代、数百万もの音楽を聞くような暇や意欲も、僕たちは持ち合わせていないのだが。
 
上述のシリコンバレーのテクノロジー集団により音楽は再び有料になったが、そのビジネスモデルは古き良きCDアルバムの時代ほど洗練されてはいない。ニューエコノミーの覇者たちは、自らの新しいプラットフォームから往年の音楽レーベルほどの収益を上げられておらず、アーティストたちは割りを食わされたままだ。音楽ビジネスの大量絶滅の後、その大地は干上がったままになった。
 
本書は、そんな海賊版の時代を舞台に、音楽を無料にした張本人たちを描く群像劇だ。本書には主に3人の人物が登場する。海賊版ブームの土台となったmp3規格を発明したオタク技術者。世の中に流通する海賊版mp3の大部分を(人知れず)流出させた、CD工場で働く黒人労働者。時代の波に乗りながらアーティストを守り、そして自らの営業利益も守りきった音楽レーベルの名物CEO。その三人がこの本の主人公だ。さて、誰が音楽をタダにしたのか?
 
結局のところ、海賊版時代の主人公たちはみな舞台から退場し、代わりにアップルを始めとしたシリコンバレーハッカーたちが音楽ビジネスの主役に取って代わった。だが彼らも、例の古きよき時代のレーベルほどには音楽で金儲けできていない。業を煮やしたアーティストたちも色々と実験しはじめている。静的な楽曲データの販売ではなく、ライブのチケット販売および会場での物販に活路を見出すやり方が、今のところの主流のようだ。本書でも言及されているとおり、レディオヘッドはスポティファイから曲を引き上げてビットトレントでアルバムをリリースし、投げ銭方式(聞いた人が自分の好きな金額を支払う)での収益化を試みている。レディ・ガガはアルバムを1ドル以下で売り出し、発売1週間で100万枚を売り上げた(もし昔ながらの3,000円という価格で販売していたとしたら、わずか330枚の売上に過ぎないのだが)。日本のHi-STANDARDは、事前予告なしにリリースした16年ぶりの新曲をリアル店舗のみで販売し、オリコンチャートで首位を取った(もはや他のCDはリアル店舗には置いてなかったのかもしれないが)。
 
結局のところ、海賊版革命は長続きせず、一時の流行に過ぎなかった。当たり前の話だが、それでは音楽を作る人がいなくなって、結局のところどのみち市場は消え失せてしまう。市場は生き延びたが収益性はまさに焼け野原で、AppleSpotifyのようなディストリビュータだけがわずかなパイを奪い合い、クリエイターが飯を食えない状況はいまだに続いている。